“migrant manager” になりゆくメキシコ

毎日暑いです!暑くなると、スパイシーなものがおいしいです。スパイシーな料理といえば…メキシコ!と、少々強引なイントロでお届けしています、GNLF1年でこの9月メキシコ渡航予定の築島です。自分の勉強と夏企画の盛り上げを兼ねて、移民問題の現在について1年生渡航メンバー2人がそれぞれ調べてみました。今日はその第一弾です!

GNLFメキシコ支部で開かれる今回の学生会議のテーマは移民問題ですが、開催国メキシコは移民問題の大きな当事者国です。アメリカ大統領選でも発言が相次いだように、メキシコはアメリカに大量の移民を送り込んでいるイメージがありますが、本当にメキシコを取り巻く移民問題はそれだけなのでしょうか。実はメキシコは現在移民の経由国、あるいは受入国としての性格を強めています。そんな変わりゆくメキシコの移民問題の概略をまとめてみました。

アメリカへ向かうメキシコ人の変化

メキシコの変化として、第一に挙げられるのが、アメリカへの移民数の増加が落ち着いてきていることです。40年間急速な成長を続けてきたアメリカ国内のメキシコ人口ですが、2001-2005年の5年間での増加数は約2,000,000人、2006-2010年の5年間での増加数は約200,000人と、その増加幅は10分の1に減少しました。(図1)この傾向は現在も続いており、2013年にはアメリカに住む移民の出身国1位の座を中国、インドに明け渡しました。さらに、2007年のリーマンショック後のアメリカ経済の悪化を受け、メキシコからアメリカへの移民数をアメリカからメキシコへ帰国する移民数が上回るようになっています。[1]アメリカで生まれたメキシコ市民の中心は15歳以下の子供であり(図2)、彼らの社会への統合や教育もメキシコにとって大きな課題になっています。[2]アメリカへの移民が減っている理由としては、アメリカ側での国境警備の強化、先述したアメリカ経済の不調だけでなく、それとは対照的なメキシコ経済の堅調な成長と強い中間層の台頭というメキシコ国内側の要素もあります。

移民受入国としてのメキシコ

メキシコの好調な経済はメキシコへの移民を引き付けています。意外なことにアメリカ人移民がもっとも多くなっています。また、メキシコには伝統的に中央アメリカ諸国、例えばグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスといった国からの移民も多く、(図3)1990年代から見られるようになったメキシコを経由してアメリカ入国を目指す移民が大幅に増加しているだけでなく、メキシコ国内に定住する移民も少なからず存在するようになりました。特にメキシコを経由国とする移民の問題は深刻で、アメリカの南側国境で逮捕された人のうち、非メキシコ人の割合は2000-2009年の間は6%でしたが、2014年には53%を記録しました。[3]従来のメキシコ人出稼ぎ労働者の多くは一人でアメリカを目指す男性でしたが、アメリカ国境で逮捕された“北の三角形”と言われるグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスの3か国出身者には女性・子供のみの世帯で移動していた人々が多いことが特徴的です。大人の同伴な旅する子供移民の保護件数は急上昇しており、アメリカ=メキシコ国境上の新たな危機的問題として浮上しています。(図4)(図5)[4]

また、メキシコに定住する移民、メキシコを経由する移民のどちらにとっても大きな脅威となっているのは麻薬カルテルや犯罪組織の存在です。これらの組織は移民の人身売買を行ったり、強奪したり、と移民の人権に対する問題を引き起こしています。例えば2010年8月にはメキシコ北東部のタマウリパス州で麻薬カルテルの強奪にあったとみられる72人の移民の遺体が発見されるという痛ましい事件がおこりました。[2]

メキシコの未来

急激に強まってきた移民受入国としての責任と負担のもとで、メキシコ政府は対策を迫られています。ペーニャ・ニエト現政権は2014年に違法移民に対する取り締まりを強化し、前年と比べ13%も多くの移民を本国に送還するとともに、グアテマラとの国境付近に検問所を開設するなどして監視を強化しました。皮肉なことに、これらの検問所のシステムや装備は、アメリカがメキシコ人移民を取り締まるため設けた検問所を模倣して作られているともいわれています。一方、72時間の一時的滞在を認める条件を緩和し、移民が合法にメキシコを経由することを推進する制度の設計や、貨物列車での危険な移動の取り締まり、犯罪組織に対するインテリジェンスの強化、移民向けの医療機関の設置や中央アメリカ諸国の領事館の増設など移民の安全と人権を守るための政策も打ち出しています。[5]

しかし、メキシコの“migrant manager” (移民の管理者)としての成熟はまだまだ途上にあります。法の支配が決して強いとは言えず、汚職が横行する政府機関に強い権限を与えることは危険だとする声も強く、実際に2014年の1月から7月の間にメキシコ人権委員会は国家移民局に対し、移民収容センターでの人権侵害について268件に及ぶ苦情申し立てを行っています。[5]

未だにアメリカへのメキシコ人移民の出稼ぎに経済的に依存する現状がある中、移民受け入れ国としての課題にも直面するメキシコ。長期的には規制強化と人権保護のバランスをとり、“migration manager”としての能力を高めることが求められています。以上の情報は主に2014年のものに基づいていますが、2年後の今どうなっているのか、送出国としても受入国としても日本よりも移民問題が大きく国民生活に食い込んでいる国の学生の生の声を聴き、自らの目で現状を見つめることを楽しみにして、さらに勉強を続けて参ります!(図6)

参考文献
すべてMigration Policy Instituteより

[1]“Mexican Immigrants in the United States”
http://www.migrationpolicy.org/article/mexican-immigrants-united-states

[2] “Mexico: The New Migration Narrative”
http://www.migrationpolicy.org/article/mexico-new-migration-narrative

[3] “Top 10 of 2014 – Issue #5: New Era in Immigration Enforcement at the U.S. Southwest Border”
http://www.migrationpolicy.org/article/top-10-2014-issue-5-new-era-immigration-enforcement-us-southwest-border#

[4] “Dramatic Surge in the Arrival of Unaccompanied Children Has Deep Roots and No Simple Solutions”
http://www.migrationpolicy.org/article/dramatic-surge-arrival-unaccompanied-children-has-deep-roots-and-no-simple-solutions

[5] “Top 10 of 2014 – Issue #8: Changing Landscape Prompts Mexico’s Emergence as a Migration Manager”
http://www.migrationpolicy.org/article/top-10-2014-issue-8-changing-landscape-prompts-mexicos-emergence-migration-manager

いかがでしたでしょうか。一言で移民と言っても国の事情により移民が直面する現状は大きく違うということですね。こうした問題について今年メキシコで開催されるGNLFメキシコ会議では1週間世界各国のトップレベルの学生と「移民」をテーマに1週間にわたって議論してもらう非常に貴重な機会を皆さんに提供いたします。そしてその会議の参加者は日本で予選会を開催して決定するのですが、なんとこの選考会で渡航メンバーに選ばれると半分ほど渡航費が団体から援助されます。そのため非常に安くメキシコに行くことが可能となるわけです。

この千載一遇の機会、これを読んでくださった皆様には是非ともつかんでいただきたいです!以下に会議に参加するためのGoogle Formのリンクを記載いたしますのでそこから登録を済ませてください!申し込み期限も後少しとなっていますが、みなさんのご参加奮ってお待ちしています!

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